人形を撮る時と人間を撮る時の違い
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等身大ドール写真はせいぜい20年程度の歴史なので、他のジャンルの様ないわゆる専門書がありません。そこでさらに技術的に前進する為には他のジャンルの専門書から色々なことを学ぶしかありません。
具体的に言うと人物撮影と共通する点は人物撮影の専門書を活用し、ドールならではの点は自分なりに開拓していくしかないのではないかと私は思っています。そこで今回は人物と同じ点、異なる点について思いつく点を書いていこうと思います。
■ 同じ点
ドールは漢字で「人形」と書きます。人の形をしていますので、光の使い方や可愛らしいポーズは人物撮影の専門書がそのまま使えます。カメラの設定やストロボの配置、レフ板の使い方も同じ様に利用すれば、同等の効果が得られるでしょう。
またモデルである人形の完成度を上げる為のヘアアレンジ、メイク、衣装のコーディネートなども人間用の解説がそのまま役立ちます。これらの点は自分のスタイルが確立するまでは、真似てみたりしながらチャレンジしてみる価値があると思います。
■ 異なる点
一方ここからが重要なところですが、人形と人間は似て非なる存在であると思っています。ここを理解していないと、人形を人間の様に撮影することは難しいと思います。言い換えると、人間が持っていて人形か持っていないものを撮影者自身が補ってあげる必要があります。
一番は人間には意思があり、人形には意思がないという点でしょう。人間ならカメラを向ければ自然とカメラ目線になりますが、人形の場合ではカメラ目線の写真を撮影する為には撮影者自らが目線の方向に移動してあげなくてはなりません。
人間は指示をしてあげると、指示内容を理解して適切なポーズを取ってくれます。必要なのはコミュニケーション能力と、適切な指示を出す能力です。
一方人形は動いてくれませんので、自分でポージングするしかありません。必要なのは、ポーズがワンパターンにならない引出しの数と、そのポーズが不自然でないかを検証出来る冷静な観察力です。
生き生きとした生命感のある写真といえば人間でも人形でも同じ様な写真を良い写真とするでしょう。しかし前述の通り人間と人形では、その写真に到達するまでに求められるスキルが全く異なります。
人物を数多く撮影している者がいざ人形を撮影すると置物ぽくなったり、逆に生き生きとした人形写真を撮影する者がモデルさんを撮影しようした時に戸惑うのは「似て非なるもの」だからだと思います。
そんな記事を書こうと思っていたら、小さい人形(身長約40cm)ですが先日旅先で久しぶりに失敗写真を撮影してしまったのでご紹介しましょう。
走り去る列車、駅名標を入れて「旅行に行ってきました!」という一枚を撮影してみました。ファインダーではOKと思っていたのですが、完成した写真を見ると「・・・。」です。下を向いていて、彼女はとてもつまらなそうです。
人形は可愛い人形を数多く輩出するメーカーがペイントしたヘッドですからとても可愛いです。しかし画面から伝わってくるのは「暑くて疲れちゃったのかな?」「この場所で写真を撮られて嫌だったんじゃない?」みたいな雰囲気です。画面全体から残念な雰囲気が伝わってきます。
今回は悪い例としてお出ししましたが、私的には絶対にお蔵入りにしたい写真です。可愛い人形作っているメーカーや、背景となっている街にも大変申し訳ない・・・そんな気持ちです。
幸い現場でNGに気付けたので1本後の列車で再挑戦します。今度はどうでしょうか、表情が明るくなった分楽しい一日を過ごした雰囲気にも感じられます。
撮影対象が人間ならば遊び終わったハイテンションのまま笑顔を作ってくれますし、プロのモデルさんなら会って10秒でも要望した雰囲気を全身で作ってくれます。しかし人形は撮影者が画面をチェックしてそういう雰囲気を作り込んであげなければなりません。
撮影をする時には「人形に足りないものはオーナーが補ってあげるんだ!」という点を意識してみてください、写真が変わると思います。